WOWOWのライブ映像に感動して、改めてPerfumeがどうやって出来たかを検証してみたい。(仮) その6

5.木村カエラ、そして、ポリリズム

中田ヤスタカとの出会いが、Perfumeにとってのターニングポイントならば、やはり、代表曲と言える、ポリリズムとの出会いが、ブレイクポイントになるだろう。また、そこに至る経緯も、Perfume的で面白い。

メジャーデビューの三部作で、アイドルファン以外の、一部の耳の早い(いわゆるサブカル層の)ファンを獲得したものの、世間一般的には、全くといって良いほど、無名であった。2006年発表の初のアルバムが、コンプリートベストというタイトルの、あたかも、今にも活動を休止してしまいそうな、イメージのまま、辛うじてリリースされた、4作目のシングルであるチョコレイト・ディスコが、当時、若者を中心に人気絶頂だった木村カエラ(以下カエラ姐さん)の目に止まった。一目でファンになったカエラ姐さんは、自身のラジオ番組でも、延々と「チョコレイト・ディスコ」をかけまくり、Perfumeの魅力を宣伝しまくった。(現在なら、ステマステマと騒がれた事だろう…。)さらに、その番組の視聴者であった、友次彰というCMディレクターが、興味を持ち、自身の手掛ける公共広告(以下ACCM)Perfumeを起用しようという事になったそうだ。(カエラ姐さんとの交流はその後も続き、ライブでの競演なども果たしているが、カエラの結婚あたりからは、あまり接点はないように見られる。)

このリサイクル運動の呼びかけのためのACCMに起用が決まって、楽曲提供のオファーが来た中田ヤスタカには、かなり早い段階で、以前から暖めていた、「ポリリズム」と言う曲のイメージがあったと思われる。2007年の7月1日からこのACCMが日本全国で公開され、一躍脚光を浴びる事となったPerfumeは、急遽、8月に開催されたロックフェスサマーソニックに、当時、アイドルとしては、異例の参加となったのだが、その時点でも、「ポリリズム」はほぼサビの部分しか出来ておらず、9月のシングルリリースまでに、製作の最終段階で、ひと悶着があったようだ。
曲名の由来は、音楽用語の「複合拍子」と、リサイクル可能なポリエチレンの語呂合わせから来ているようだが、「複合拍子」と言う意味合いでの「ポリリズム」として、重要な間奏部分(通称「ポリループ」)を巡って、アミューズと徳間ジャパン、両サイドからアイドルとしてふさわしくないだの、音飛びだと思われるだのと言った、的外れなNGを受けたらしいのだが、中田氏にしてはめずらしく、自ら直談判し、この「ポリループ」を含んだ、シングルとしてのリリースにこぎつけたそうである。(そんな熱の篭もった製作意欲を再び取り戻してほしいのだが…。)
また、そのポリループを含んだダンスは、翌年の渋谷AXでのライブで初お披露目となり、その当時の、興奮とどよめきは、以後もファンの間で語り草となっている。

この「ポリリズム」によって、Perfumeは全国区の知名度を獲得していくに至るのだが、2010年の東京ドーム公演でのクライマックスで、あ〜ちゃんが「この曲はPerfumeに様々なチャンスをもたらしてくれた」と語るように、その後もアメリピクサー社の人気アニメ映画「Cars2」の挿入歌に抜擢される等、未だに、その魅力が衰えない名曲である。(続く)